吐月峯はひふき)” の例文
取り敢へず次ぎの室へ通させて置いて、私は顏を洗ひ、食事にかゝつたが、隣りの室では、咳拂ひと、吐月峯はひふきを叩く音が頻りに聞えた。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
初夏の陽をけ/\、とぐろを卷いた縁側から、これも所在なく吐月峯はひふきばかり叩いてゐる平次に、一とかど言ひ當てたつもりで聲を掛けたのでした。
「宵から曉方まで三番打つたさうですよ。引つ切りなしに石の音がして、それに吐月峯はひふきを叩く合の手が入るんで、寢付かれなくて弱りました、——これは内證ですがネ、親分」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「なに、吐月峯はひふきの音がしたよ。」と、私は笑ひながら言つた。
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)