藤堂家とうどうけの大きな屋敷があって、内藤豊後守ないとうぶんごのかみの屋敷があって、ちょっぴりとその真中へ狭まった町家のうちに、円山派まるやまはの画描き篠原梅甫しのはらばいほの住いがある。
内藤豊後守ないとうぶんごのかみは、ちんのような顔をキョトキョトさせ、小笠原左衛門佐おがさわらさえもんのすけは、腹でも痛いのか、渋い面だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)