八十島主計やそしまかずえ)” の例文
「原田——」久世はつと、甲斐の耳に口をよせて囁いた、「八十島主計やそしまかずえ、あっぱれよくやった、心おきなく死ぬがいい、あとは引受けたぞ」
宿へ着いたのはまだ明るいじぶんで、甲斐はおくみの家にいるときの、「八十島主計やそしまかずえ」という名を名のった。
「では訊くが」雅楽頭はさらに云った、「そのほう八十島主計やそしまかずえという者を知っているか」
甲斐はその日の午後七時ごろ、西丸下にある久世大和守くぜやまとのかみ広之ひろゆき)の屋敷へゆき、八十島主計やそしまかずえとなのって、大和守に面会を求めた。取次の者が二人まで替り、玄関でまた中年の侍が応対に出た。
「あるじか」と雅楽頭が云った、「八十島主計やそしまかずえと申すそうだな」
八十島主計やそしまかずえと申します。