抽斎は日常宋儒のいわゆる虞廷ぐていの十六字を口にしていた。の「人心惟危じんしんこれあやうく道心惟微どうしんこれびなり惟精惟一これせいこれいつ允執厥中まことにそのちゅをとる」の文である。かみの三教帰一の教は即ちこれである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)