かれは徳川家の伊賀衆隠密組いがしゅうおんみつぐみ組頭くみがしらで、かつて富士ふじ人穴城ひとあなじょうへ、じぶんが主命しゅめいでようすをさぐりにいったとき、はじめてその名を知った男だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)