上靴ガローシ)” の例文
外套の下に上靴ガローシ防寒靴ワーレンキが三足かためてあった。窓から二米はなれて湯槽があった。黒い髪だけが湯槽の外へ見えた
無題(七) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
上靴ガローシの中で足が痛いほど寒かった。街はますます白く、ますます平べったかった。モスクワ労働新聞社の高い窓の一つに午後三時の西日がさして、火のように硝子を燃やした。
シナーニ書店のベンチ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
上靴ガローシをぬぐのか脱がないのか、ナースチャは、迷って、誰もいぬその室に立ち、見まわした。室の境に戸がなく、奥が見えた。上靴をはいたまま、女がある机の前に立っている。
赤い貨車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
四階の手摺から下を見下すと、下足場の棕梠の拡った青葉のてっぺんと、その蔭に半分かくされたテーブル、うつむいて上靴ガローシをはいている女の背なかまで一つの平面に遠くみおろせた。
モスクワ印象記 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)