鬼哭寺の一夜きこくじのいちや
百里に迷ふ旅心、 古りし伽藍に夜を明かす。 甍漏る音の雨さびて 憂きわれのみに世死したり。 風なく搖らぐ法幢の、 暗き方へと靡くとき、 佛も寒く御座すらん。 黄金と光る蟵蛛の眼の、 闇を縫ふべき計、 銀糸に引く見れば 冥府の色より物凄し。 …