ボストン・バッグ
朝の九時に鐵のくぐりを出た打木田は、それでも、しばらく立つて誰か迎へに來てゐるだらうかと、あちこち見𢌞したが、やはりさとえは來てゐなかつた。外にも出る者がゐるらしく、差入屋の入口に五六人の肩をちぢめた連中がゐたが、迎へのない打木田を見ると眼 …