或る女の手記あるおんなのしゅき
私はそのお寺が好きだった。 重々しい御門の中は、すぐに広い庭になっていて、植込の木立に日の光りを遮られてるせいか、地面は一面に苔生していた。その庭の中に、楓の木が二列に立ち並んで、御門から真直に広い道を拵えていた。道の真中は石畳になっていて …