茶壺ちゃつぼ)” の例文
茶壺ちゃつぼ。丈一尺四分、胴巾九寸、口径四寸五分。陶器。窯は江州ごうしゅう信楽しがらき。手法は焼締め、鉄流し釉。日本民藝美術館(現在、日本民藝館)蔵。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
二十年ほど前に小さい茶壺ちゃつぼにいれて固くふたをして、庭の植込みの奥深く、三本ならびのすぎの木の下に昔から屋敷に伝っているささやかなお稲荷いなりのお堂があって
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
空は茶壺ちゃつぼふたのように暗く封じられている。そのどこからか、隙間すきまなく雨が落ちる。立っていると、ざあっと云う音がする。これは身に着けた笠と蓑にあたる音である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まだ織田信長が尾張おわりにいたころから、秀吉ひでよし伯母聟おばむこになる杉原七郎左衛門すぎはらしちろうざえもんという人が、清洲きよすに住んで連尺商れんじゃくあきないをしていたという話があり、また「茶壺ちゃつぼ」という能狂言のうきょうげんでは
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その日はお茶壺ちゃつぼの御通行があるとかで、なるべく朝のうちに出発しなければならなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その後また、竹に代うるに他の器具をもってし、あるいはキセル三本を用い、あるいは茶壺ちゃつぼのごときものを用い、蓋に代うるに平面の板を用うるも、多少その効験あるを見たり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
江戸へ婿入りすることになりまして、柳生家重代じゅうだいのこけざる茶壺ちゃつぼ朝鮮渡来ちょうせんとらいみみこけざるという、これは、相阿弥そうあみ芸阿弥げいあみの編した蔵帳くらちょうにのっている、たいそう結構な天下の名器だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして思わず、懐中ふところに秘していたすずの小さい茶壺ちゃつぼをそっとさわってみた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの民家で用いた信楽しがらき茶壺ちゃつぼ(挿絵第二図)が、支那のいわゆる「黒壺くろつぼ」にどこが劣るだろうか。同じ支那から渡った貧しい茶入ちゃいれに美を説きながら、なぜ立杭たちくいの壺に盲目であるのか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
すずの小さい茶壺ちゃつぼを取出して、劉備は、卓の上に置いた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)