吹起ふきおこ)” の例文
この折から聞えはじめたのはどっという山彦こだまに伝わるひびき、ちょうど山の奥に風が渦巻うづまいてそこから吹起ふきおこる穴があいたように感じられる。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつか身は不治のやまいに腸と胃とを冒さるるや寒夜かんやに独り火を吹起ふきおこして薬飲む湯をわかす時なぞ親切に世話してくれる女もあらばと思う事もあったが
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
風にもまれて暮したりやうやく五日のさる下刻げこくに及び少し風もしづまり浪もやゝおだやかに成ければわづかに蘇生そせいの心地してよろこびしが間もなく其夜の初更しよかうに再び震動しんどう雷電らいでん颶風ぐふうしきりに吹起ふきおこり以前にばいしてつよければふね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をりからきこえはじめたのはどツといふ山彦やまひこつたはるひゞき丁度ちやうどやまおくかぜ渦巻うづまいて其処そこから吹起ふきおこあながあいたやうにかんじられる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)