きょう)” の例文
そして、座頭以上、勾当こうとう、別当、検校けんぎょうなどの六、七十名だけが残って、しばらくは等持院の内で、茶と点心てんしんきょうをうけていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛骨などをきょうするのであったから、その頃から吒祇尼の狐ということが人の思想にあったのではないかと思われるが、これは真の想像である。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
香以は今芸人等と対等の交際をする身の上になって、祝儀と云うものは出さぬが、これにきょうする酒飯の価はいささかの売文銭のく償う所ではなかった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
北米の大説教家ビーチアルは、曾て数塊の馬鈴薯を人にきょうして曰くだ、此は吾輩の手作だ、而して一塊一ドルはかゝって居るのだ、折角食ってくれ玉えと。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
内藤岡ノ二士及ビ泥江春濤円桓同ジク舟ニ入ル。きょうともそなわル。潮ハまさニ落チテ舟ノ行クコトはなはすみやカニ橋ヲ過グルコト七タビ始メテ市廛してんヲ離ル。日すでくらシ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それでこの日に田から迎えて来てこれを正座にして田植以来の手伝人を招き、餅やいろいろの食物をきょうするのは、この県南北を通じての一様の慣例なのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お政はゆめ心地ここちに心ばかりの酒食しゅしょくをととのえてふたりをきょうした。つねはけっして人をそらさぬ人ながら、ただ「どうぞ」といったままほとんど座にたえないさまである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
手料理を人にきょうするものは先方の胃袋が堪うるといなとに頓着とんちゃくなく多食せらるるをこころよしとなす癖あり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
式後の公使にはつるで、菓子カステラなどをきょうせられたという。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから諸賓をねぎらう大宴に移って、管鼓琴絃かんこきんげん沸くばかりな音楽のうちに、料理や酒が洪水の如く人々の華卓にきょうされた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは栄玄がぜんに対して奢侈しゃしを戒めたことが数次であったからである。抽斎は遺られた所の海鰱をきょうすることを命じた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この爽麗そうれいなる温室内に食卓を開きて伯爵家特有の嘉肴珍味かこうちんみきょうす。このうちに入る者はあたかも天界にある心地ここちしてたちまち人間塵俗じんぞくの気を忘る。彩花清香せいこう眉目びもくに映じ珍膳ちんぜん瑶盤ようばん口舌をよろこばす。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人がミサキを信じてこれをきょうせんとし、烏の本能的なる貪食どんしょくもって、神が祭を享けたまうしるしとする思想が、もしも中頃から発達して来たものならば、烏の環境はこれに伴のうて改まり
富豪ものもちの家などでは、表へ向って、五色の屏風びょうぶをたてならべ、書画の名品や古玩骨董こがんこっとうの類を展観してみせたり、あるいは花器に花を盛って、茶をきょう
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小侍と茶道衆が、こもごも、彼のまえに来ては退さがって行った。戦場では見られない膳部や酒がきょうされた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食膳がきょうされた。あけの杯も添えてある。信長からそれをうけて、ひと口、美しく飲んだ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今にしてさとらずんば、汝の腐屍ふしもまた、祁山きざんの鳥獣にきょうさるる一朝の好餌でしかないぞ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臣はかりそめにも蜀帝国の御使おんつかいであり、また蜀中より選ばれたる第一の使臣たり儒者たるもの。迎うるに、剣槍の荊路けいろを以てし、きょうするに、大釜の煮え油を以てするとは、何事であるか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、空腹であろうという仙石家の好意で、湯漬ゆづけきょうせられた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その晩、劉安は肉を煮て玄徳にきょうした。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)