面付つらつき)” の例文
見た目はよくはないが、その面付つらつきから察すれば実に性根しょうねのしっかりした奴らです。これならきっと軍艦でも動かせるよ。
「みんなは知りませんが、そう云った奴の面付つらつきだけは記憶おぼえています。色の黒い、痘痕あばたのある、せこけたまずい面でした。朝鮮人かも知れません」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この猫もとは皆川町時代に何処からかまぐれ込んで来た迷い猫であって、毛並から面付つらつきまでが余りくなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
甚「とぼけやアがって此畜生め、先刻さっき鎌を出したら手前てめえ面付つらつきは変ったぜ、殺したら殺したと云えよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と言わぬばかりの高慢の面付つらつきしゃくさわってたまらなかったが、其を彼此かれこれ言うと、局量が狭いと言われる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しこの婆さんの笑いが毒々しい笑いで、面付つらつき獰悪どうあくであったら私はこの時、憤怒ふんどしてなぐとばしたかも知れない。いくら怖しいといったって、たかが老耄おいぼればばあでないか。
老婆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あさつぱら出掛でかけつちやつてまあだ行逢えきやえもしねえから、どうするつちんだかわかんねえが、どうせうめ面付つらつきもしちやらんめえな、んで怪我けがなんぞさせてえゝ心持こゝろもちぢやあんめえな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だが、困つた事には、醜い面付つらつきをした者は、うかすると心までがひがんで来る。
ある農家の前に差し掛かった時など、ここでも確かに我が一行に驚いて盆踊りを止めたものと見え、七、八人の男女はキョトンとした面付つらつきをして立っておったが、我等の変テコな扮装いでたちを見て
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
苦力頭は、鼻もヒッカケない面付つらつきで俺を冷たく無視した。苦力達がさんざ朝飯を食い始めたが、誰も俺にマントウの一片ひとかけらも突き出そうとしなかった。俺は喰えというまで手を出すまいと覚悟した。
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
おまけに眼鏡を忘れて来ている面付つらつきのまずい事。分捕ぶんどりスコップに洋服を着せたってモウすこしは立派に見えるだろう。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ここで斬るのじゃないかという面付つらつきで、先に立っている奴が白い歯をき出して冷笑しいしい、チラリチラリとワシの顔を振り返りおったのには顔負けがしたよ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
特権階級を気取るつもりらしく、ヤタラに銀狐の剥製か何かを首に巻いているが、その銀狐の面付つらつきの方が、直ぐお隣の御面相よりもよっぽどシャンなんだから滑稽じゃないか。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)