銀象嵌ぎんぞうがん)” の例文
清水のおもてが、柄杓ひしゃくこけを、琅玕ろうかんのごとく、こずえもる透間すきまを、銀象嵌ぎんぞうがんちりばめつつ、そのもの音の響きに揺れた。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その上から、銀象嵌ぎんぞうがん短銃たんづつをとってかまえ、いましも、三度目の筒口つつぐちに、伊那丸の姿をねらっていたが、龍太郎が近づいたのをみると、オオ! とそのつつ先を向けかえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつては銀象嵌ぎんぞうがんの細工や華革張かかくばりの調度も店々にあったであろう。陶器も木器も賑やかであったに違いない。しかし今は望むことが出来ない。鍾路の夜店も大方は日本の安ものばかりを売る。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
雲の形が葉をひろげて、うすく、すいすいと飛ぶ蛍は、瓜の筋に銀象嵌ぎんぞうがんをするのです。この瓜に、朝顔の白い花がぱっと咲いた……結綿ゆいわたを重そうに、娘も膝にたもとを折って、その上へ一顆ひとつのせました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つには、銀象嵌ぎんぞうがん吉丁虫たまむしを、と言っていた。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)