くしろ)” の例文
その若者は彼と同じ市松の倭衣しずりを着ていたが、くびに懸けた勾玉まがたまや腕にめたくしろなどは、誰よりも精巧な物であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女は藤色の衣をまとい、首からは翡翠ひすい勾玉まがたまをかけ垂し、その頭には瑪瑙めのうをつらねた玉鬘たまかずらをかけて、両肱りょうひじには磨かれたたかくちばしで造られた一対のくしろを付けていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
金の鈴、銀の鈴、眞鍮しんちうの鈴、あかの鈴、——足結あゆひの鈴、手の鈴、くしろの鈴、大刀の鈴、鈴鏡すゞかゞみ。さては犬の鈴、たかの鈴、凡そ鈴と名の付くものなら何でもある——鈴は要りませんかな——
この二柱の神は、拆くくしろ五十鈴いすずの宮いつき祭る。次に登由宇氣とゆうけの神、こはつ宮の度相わたらひにます神なり。次に天の石戸別いはとわけの神、またの名は櫛石窻くしいはまどの神といひ、またの名はとよ石窻の神といふ。
金の鈴、銀の鈴、真鍮しんちゅうの鈴、あかの鈴、——足結あゆいの鈴、手の鈴、くしろの鈴、大刀の鈴、鈴鏡、さては犬の鈴、鷹の鈴、およそ鈴と名の付くものなら何でもある——鈴はりませんかな——
卑弥呼はひじに飾ったくしろ碧玉へきぎょくを松明に輝かせながら、再び戸の外へ出て行った。若者は真菰まこもの下に突き立ったまま、その落ち窪んだ眼を光らせて卑弥呼の去った戸の外を見つめていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
するとそこへもう一人の若者が、斑竹はんちくふえを帯へさして、ぶらりと山を下って来た。それは部落の若者たちの中でも、最も精巧な勾玉やくしろの所有者として知られている、せいの高い美貌びぼうの若者であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「エ——鈴屋で御座い。鈴はいりませんかな、手の鈴、足結あゆひの鈴、くしろの鈴——」