金太きんた)” の例文
さつきから野葡萄ばかりさがしてゐた金太きんたがさう云ふと、銀色の穂薄ほすすきで頭をたゝき合つてゐた勇治ゆうぢ庄吉しやうきちとが、すぐ口をそろへて云ひました。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
金太きんたと云う釣好つりずき壮佼わかいしゅがあった。金太はおいてけ堀に鮒が多いと聞いたので釣りにった。両国橋りょうごくばしを渡ったところで、知りあいの老人にった。
おいてけ堀 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「行ってみて下さい、大根畠の金太きんたの野郎が、一と足先に嗅ぎ付けて、さんざん掻き廻しているのを見て、あっしはここへ駆け付けたんだが——」
きまして麻布さんの方へお嬢さんが家出をなすった事を知らせにやりまして、金太きんたがようやく先方むこうへ着いたくらいの時に、又ういう変事が出来ましたから、おっかけて人を出し
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雨も降らないのに、恐ろしく大きな傘を拡げて、その下で飴屋あめやさんが向鉢巻むこうはちまきで、大声でいい立てながら売っています。「飴の中から金太きんたさんが飛んで出る。さあ買ったり買ったり。」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
置いて何処どこかへ行ってしまうと云うじゃアねえか、前の金太きんたの野郎でも達者でいればいが、己も此の頃じゃア眼が悪くなって、思うように難かしい物は指せなくなって居るから困る
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんだ金太きんたの野郎が酒が強いからあにいもう一杯いっぺいやんねえと云った、いゝなアけんでは負けねえが酒では負けるな、もう一杯いっぺい大きいので、もう一杯いっぺえという、悔しいやん畜生かなわねえ、滅法やった
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから乱暴勝らんぼうかつてえ野郎が焚火たきびあたって、金太きんたという奴を殴るはずみにぽっぽと燃えてる燼木杭やけぼっくいを殴ったからたまらねえ、其の火が飛んで金太の腹掛の間へへいって、苦しがって転がりやアがったが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
孫「これ何を呼びなよ、あの金太きんたをそうして表へ錠をおろすのだよ」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)