金唐革きんからかわ)” の例文
蝋塗ろうぬりに螺鈿らでんを散らした、見事なさやがそこに落散って、外に男持の煙草入が一つ、金唐革きんからかわかますに、そのころ圧倒的に流行はやった一閑張いっかんばりの筒。
その席へ幇間ほうかんが一人やって来て言うことには、ただいませつは、途中で結構なお煙草入の落ちていたのを見て参りました、金唐革きんからかわ珊瑚珠さんごじゅ緒〆おじめ
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてお久のような妾を置いて、腰に金唐革きんからかわの煙草入れを提げ、蒔絵の弁当箱を持って芝居見物に来るようなふうに、………いや事に依ると十年を待たないかも知れない。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
丁度「金唐革きんからかわ」が姫路ひめじの産となったのと同じであります。他にない革細工でありますし、質もよくまた美しさもゆたかでありますから、永く仕事が続くことを望んでみません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
先なる一壮漢は、狭霧さぎり薄戦衣うすごろもに、虎頭ことうを打ち出した金唐革きんからかわの腹巻に、髪止めには銀のはちまきを締め、おぼろめく縒絨よりいと剣帯けんたいへ利刀を横たえ、騎馬戛々かつかつ、ふと耳をそばだてた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国手、一個の書架しょだな抽斗ひきだし、それには小説、伝奇の類が大分ちつを揃えて置かれた——中から、金唐革きんからかわの手箱を、二個出して、それを開けると無造作に、莞爾々々にこにこしながら卓子の上に並べられた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今そのかわりに、金唐革きんからかわの鎧櫃が、ドッシリと飾られて——。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
金唐革きんからかわ文箱ふばこに、大切だいじそうに秘めてあった一通の手紙。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「親分のめえだが、泥棒が金唐革きんからかわの飛切り上等の懐中ふところ煙草入を忘れて行くという法はねえ。おまけに煙管キセルは銀だ。あれは安くちゃ買えませんぜ」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
とりわけ「金唐革きんからかわ」と呼ぶものが有名で、金泥きんでい色漆いろうるしを用い模様を高く浮き出させた鞣革なめしがわであります。草花や小鳥や獣などを美しくあしらいました。よく文箱ふばこや袋物などに見られます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
手さぐりで膝の下敷きになった猿手さるで金唐革きんからかわの煙草入れを捜しあてたが、煙管きせるのありかが分らないでしきりにその辺をさぐっているのを、気がついたお久が座布団ざぶとんの下から見つけ出して
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見ると、銀紋草色の官袍かんぽう金唐革きんからかわ胸当むねあてをあて、剣帯けんたいの剣を前に立ててそれへ両手を乗せ、ぎょろと、椅子いすからこっちを睨まえている人物がある。ここの高官にしては思いのほか若そうな年齢だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
傍へよって落したものを見ると、それは金唐革きんからかわの香箱でした。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
真物ほんもの金唐革きんからかわで張りつめた、見事な手箱ですが、たった一撃で打ち割られて、中の木地きじがメチャメチャに砕けております。
平次はゆうべ染吉の死骸から持って来た、金唐革きんからかわの煙草入を出して、中から二枚の小判をつまみ上げます。
逆上気味のぼせぎみのお勢をなだめて訊いてみると、泥棒は暁方あけがた入ったものらしく、お勝手口をコジ開けて、お勢の枕元から、金唐革きんからかわの小さい手箱を持出し、路地で打ち割って
平次は染吉の死骸から抜いた金唐革きんからかわの恐ろしく金のかかったらしい煙草入を月の光にすかしました。
「なんだ懐中煙草入じゃないか。——金唐革きんからかわ贅沢ぜいたくなものだな。煙管きせるは銀ののべか、おやおや滅茶滅茶につぶされている。これじゃ煙も通るまいよ。——誰のだい、こいつは?」