よこ)” の例文
獨り者の四十男が、美しくも惱ましい主人の女房に、よこしまの戀慕をして居たことは、お作の困じ果てた言葉の末にもよく現はれます。
それとも思いよこしまなるものは遂に正しきものに面を向ける事が出来ないのであろうか。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
見分けんぶんするにしのびざる所なり故に此半四郎も己正直なる心より番頭久兵衞がよこしまなるを聞て立腹りつぷくし殊に又今酒をのんだる一ぱい機嫌きげんゆゑ猶々なほ/\いきどほりはげしくたゞちに油屋の見世へ踏込ふみこんで番頭久兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
愛は直ちに不義であり、よこしまなもの、むしろ死によつて裏打されてゐる。
ラムネ氏のこと (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
卑怯なよこしまな意図が働いて居ると、考えひがめられないことはなかった。
神の如く弱し (新字新仮名) / 菊池寛(著)
男人形のように清潔な感じのする村松金之助を今の今まで忘れずに居てくれたばかりでなく、気に染まぬ婚礼話の進行中に、ほのかなそしてよこしまな記憶と
保ち居るのみなりれば新規しんきかゝへの用人安間平左衞門と言は當年四十歳餘りなれども心あくまでよこしまにして大膽不敵だいたんふてき曲者くせものなり此者金銀を多く所持しよぢなし嘉川家身代しんだい仕送しおくりをするにより主人も手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
呵々から/\と氣違ひ染みた笑ひを突走らせるのは、黒髮も衣紋も滅茶々々に亂した妖婦お小夜、金泥きんでいに荒海を描いた大衝立おほついたての前に立ちはだかつて、艶やかによこしまな眼を輝かせます。