逐出おいだ)” の例文
夫の死後しきりに寵愛ちょうあいしている小姓こしょう上りの渾良夫こんりょうふなる美青年を使として、弟蒯聵との間を往復させ、秘かに現衛侯逐出おいだしを企んでいる。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
町「不束ふつゝかのもので何処どこへ参っても御意にらず逐出おいだされたとき宿やどがございません、どうかお見捨なく御膳炊きにお置き遊ばして下さい」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
で、女房を逐出おいだし得てからは、それこそせいせいした心持になって、渾身こんしんの情を傾けて力寿を愛していたことであろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
犬嫌いぬぎらいの父は泊めた其夜そのよ啼明なきあかされると、うんざりして了って、翌日あくるひは是非逐出おいだすと言出したから、私は小狗こいぬを抱いて逃廻って、如何どうしても放さなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そこで今度は事務長が面喰めんくらって、早速小僧を逐出おいだしにかかったが、小僧がなかなか降りようとしない。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人を捕えて牢に入れたり東京の外に逐出おいだしたり、マダれでも足らずに、役人達はむかしの大名公卿の真似をして華族になって、れ見よがしに殻威張からいばりやって居るから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おかた逐出おいだし(二月九日)
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と、逐出おいだす筈の者に、如何いつしかポチという名まで附いて、姿が見えぬと父までが一緒に捜すようになって了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
明治何年か保安条例の出たとき、私もこの条例の科人とがにんになって東京を逐出おいだされると云う風聞。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「何と仰言ったって美鳥さんを逐出おいださせるような残酷な事は、断じて、断じてさせないわ」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これもお村故でございます、仮令たとえ一晩でも取返して女房にした上、表へ逐出おいだそうとも、彼奴がびんの毛を一本々々引抜いて鼻でも切って疵だらけにしなければ腹がえませんから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
父様とっさまくなってほかに親類はなし、き処のない心細い身の上、旦那様は情深い方だから不憫だと思って逐出おいだしもしめえから、旦那様の処へ御膳炊きに願いてえと云うのだが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
幾らよっぱらったって親の腹へ乗る者アえぞ呆れた、酒は飲むなよくねえ酒癖だからせというに聴かねえで酔ぱらってはけえってやアがって、たった今逐出おいだすから出ろえ、おっかねえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れより事があらわれますれば、拙者は屋敷を逐出おいだされる事になります、わたくしの身は仕方がない事でございますが、あなた様の御尊父にも済まぬ事で、何卒どうぞ是れまでお約束は致しましたが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と叱りつけて、小者に門外もんそと逐出おいださせました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)