ぺん)” の例文
旧字:
「ばかを申せ。きょうは是が非でも二ノ森を踏破して、お花畑のぺんから三十五社、ありの細道、または人跡未踏という、つるぎの刃渡り、百足虫腹むかでばらまでも、越えてみなければ気がすまぬ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医科大学生と間違へてへやの番号を聞いたのかしらんと思つて、五六歩あるいたが、急に気が付いた。女に十五号を聞かれた時、もう一ぺんよし子のへや後戻あともどりをして、案内すればよかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あたまのてッぺんからあし爪先つまさきまで、見上みあおろしながら、言葉ことばどもらせた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
今朝見た通りの餅が、今朝見た通りの色で椀の底に膠着こうちゃくしている。白状するが餅というものは今まで一ぺんも口に入れた事がない。見るとうまそうにもあるし、また少しは気味きびがわるくもある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三十尺もあろうかと思われる帆ばしらのぺんに。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このくらい力を込めて食い付いたのだから、大抵なものならみ切れる訳だが、驚いた! もうよかろうと思って歯を引こうとすると引けない。もう一ぺん噛み直そうとすると動きがとれない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、まさしく屋根やねぺん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「押しつまってさぞ御忙おいそがしいでしょう。この通りごたごたです。さあどうぞこちらへ。何ですな、御互に正月にはもうきましたな。いくら面白いものでも四十ぺん以上繰り返すといやになりますね」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)