起居振舞たちいふるまい)” の例文
主水はなにかしらの存念ぞんねんを胸にひそめているらしい。それは起居振舞たちいふるまいやものの言いかたが、この頃なんとなく変ってきたことでもわかる。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「だって、急に起居振舞たちいふるまいが小笠原流になったり、ひざっ小僧がハミ出してるくせに、日本一の鹿爪しかつめらしい顔をしたり、お前よほどあわてているんだろう」
背は高く、面長おもながで、風采ふうさいの立派なことは先代菖助しょうすけに似、起居振舞たちいふるまいゆるやかな感じのする働き盛りの人が半蔵らの前に来てくつろいだ。その人がお粂の旦那だ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
江戸の田原町の小市の手から山口屋へ参って話をいたしまして、玉を見せると、品といい器量といい、起居振舞たちいふるまい裾捌すそさばき、物の云いようまで一つも点の打ちどこのない、天然備わった美人で
この目的のためにしばしばこの女の住居すまいの近所を徘徊はいかいして容子ようす瞥見べっけんし、或る晩は軒下のきしたに忍んで障子に映る姿を見たり、戸外にれる声をぬすいたりして、この女の態度から起居振舞たちいふるまい
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
朝夕ちょうせき平穏な時がなくなって、始終興奮している。苛々いらいらしたような起居振舞たちいふるまいをする。それにいつものような発揚の状態になって、饒舌おしゃべりをすることは絶えて無い。むしろ沈黙勝だと云っても好い。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一見、醜男ぶおとこで鈍重らしく見えるが、対坐して、この人のぽつりぽつり物を云うのを聞きながら眸を見、起居振舞たちいふるまいを見ていると、何ともいえぬ静かな心持になるとは、誰も等しく云う事だった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めっきり鬢髪びんぱつも白くなり、起居振舞たちいふるまいは名古屋人に似て、しかも容貌ようぼうはどこか山国の人にも近い感じのする主人公が、続いて半蔵らを迎えてくれる。その人が勝重の父親だ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やせて背は高く、面長おもながで、容貌ようぼう凛々りりしいことはドイツ人に似、起居振舞たちいふるまいはゆっくりではあるが、またきわめて文雅な感じのある年老いた人がそこに彼らを待ち受けていたという。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)