諷諫ふうかん)” の例文
天皇は日頃にも似ず、上皇に対して直々諷諫ふうかんをこゝろみた。上皇の忿怒ふんぬいかばかり。その日を期して、二人はまつたく不和だつた。
道鏡 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
裔一は置土産に僕を諷諫ふうかんしたのである。僕は一寸腹が立った。何もその位な事を人に聞かなくても好いと思う。それも人による。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
妾をおくことを、お家のための重大責任として家来が諷諫ふうかんしたものでありました。けれども能登守は、それを悟らぬもののようであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ながらぢやうさまは何處いづこへぞお姿すがたえぬやうなりと人騷ひとさわがせするもあり乳母うばろく/\あはさずおたかかたへ寢床ねどこなら浮世うきよ雜談ざふだん諷諫ふうかん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
およそ人をいさむるには、人の気質によりて直諫ちょっかん諷諫ふうかんの二つの法あり。知らずんばあるべからず。その心和順わじゅんにて義理明らかなる人ならば直諫ちょっかんすべし。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
れ努めた方だったから、この家筋の人々は鎌倉追討の御企てのおりは、警戒して敬遠されており、慈円などは『愚管抄』という歴史論を書いて、諷諫ふうかんするという風であった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
「白浪のうつ脈取坊」には犯罪被疑者がその性情によって色々とその感情表示に差違のあることを述べ「拷問」の不合理を諷諫ふうかんし、実験心理的な脈搏の検査を推賞しているなども
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かしこくも主上しゅじょうは満城紅緑為誰肥と諷諫ふうかんせられた。それも三日坊主で聞き流した。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
病人の左右の耳から青龍が出て口より火焔かえんを吐き、清行に向って云うのに、自分は生前尊閣の諷諫ふうかんを用いなかったゝめに左遷のき目を見、筑紫の空に流寓るぐうして果敢はかない最後を遂げたのであるが、今
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
このほか、座談のうちには、信長の宿将たりともいえないような思い切った直言や、諷諫ふうかんを、宗室という男は、平気でいって退けるのである。連れの宗湛もまだ若いくせになかなか辛辣しんらつなことをいう。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細君の顔には多少諷諫ふうかんの意が現われていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今に知る法華経の行者日蓮が諷諫ふうかん
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
天皇は日頃にも似ず、上皇に対して直々諷諫ふうかんをこころみた。上皇の忿怒ふんぬいかばかり。その日を期して、二人はまったく不和だった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
諷諫ふうかんとはただちにその人の過悪かあくをさしあらわしていわず、まずその人のよきところをあげてめ、その人を喜ばしめ、その人の心に従いてさからわず
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
といって、主膳には断じて、それを弾劾だんがいしたり、諷諫ふうかんを試みたりする資格はない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かしこくも主上しゅじょうは満城紅緑為誰肥と諷諫ふうかんせられた。それも三日坊主で聞き流した。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
よのつねの人ならば諷諫ふうかんすべし、諷諫をよくして人のよく聞き入れたるためし多し。是いさめのよき手だてなり。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)