かか)” の例文
彼女かれすそを高くかかげて、足袋跣足たびはだしで歩いた。何を云うにも暗黒くらがり足下あしもとも判らぬ。つるぎなす岩に踏み懸けては滑りち、攀上よじのぼってはまろび落ちて、手をきずつけ、はぎを痛めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
左右のはかまもすそを、高くかかげていた武蔵は、そのはずみに、海水の中へ、軽く跳び下りていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれ何處どこへでもべたりとすわるのでしり丸出まるだしにかかげてやつても衣物きものどろだらけにした。それでしかられてもどろかわいたそのしりたゝかれても、おつぎにされるのはかれにはちつともおそろしくなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鼠すなわち見えず、憎むべきの物を以てまた能く人のために患を防ぐは怪しむべしとあるを思い出で、もしさる事もやとふすまかかげ見ればいと大いなる蜈蚣むかでくぐまりいたりければすなわち取りて捨てつ。