蓬々ぼう/\)” の例文
聞て重四郎成程々々なるほど/\好氣味よいきみなり然し此まゝかうしても置れまいと兩人つぶやき居る折から此物音に驚きて隱亡をんばう彌十ひげ蓬々ぼう/\かみ振亂ふりみだし手には鴈投火箸がんどうひばし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蓬々ぼう/\けたかみくしれてつめたいみづれたときおつぎはやうや蘇生いきかへつたやうになる。それでもはまだあかくて態度たいどがふら/\と懶相だるさうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
狐憑きつねつきのやうに髮を蓬々ぼう/\と亂した故郷の妻の血走つた怨みがましい顏や、頭部の腫物を切開してY町の病院のベッドの上に横たはつてゐる幼い子供の顏や
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
驚きながら四辺あたりを見ますと、結構な木口きぐちの新築で、自分の姿なりを見ると、単物ひとえものそめっ返しを着て、前歯のりました下駄を穿き、腰にきたな手拭てぬぐいを下げて、頭髪あたま蓬々ぼう/\として
直に目にうつるは鬚髯しゆぜん蓬々ぼう/\たる筒袖の篠田長二なり「では、差当り御協議したいと思つたことは、是れで終結を告げました——少こし時間ときおくれましたが、他に御相談を要する件がありますならば——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
見ると矢立を持って鼠無地の衣服に、綿の沢山入っております半纒を着て居り、月代さかやき蓬々ぼう/\として看病疲れで顔色の悪い坊さんでございますから、一座の人々が驚きました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
只今たゞいま是へいだすべしと言れけば同心はかしこまり候と立て行けるが頓て身には半※はんてん眞向まむきよりほゝへ掛て切下きりさげられし疵痕きずあとありせいひくひげ蓬々ぼう/\として如何にもみすぼらしなる者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
禿げた頭の月代さかやき斑白まだらになりまして胡麻塩交りの髭が蓬々ぼう/\生え頬骨が高く尖り小鼻は落ちて目も落凹おちくぼみ下を向いて心のうち或遭王難苦わくそうおうなんく臨刑慾寿終りんけいよくじゅしゅう念彼観音力ねんぴかんのんりき刀尋段々壊とうじんだん/\え或囚禁枷鎖わくしゅうきんかさ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御助け下され有難く御禮言葉ことばに盡し難し少々は打疵うちきずを受たれども然までの怪我にも是なしと云ながら女房は後藤を熟々よく/\るに月代さかやき蓬々ぼう/\はえまなこするどき六尺有餘の大男なれば又々仰天なし一旦命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)