落目おちめ)” の例文
わたしのうちでちらと見かけたのが、おまえさんの落目おちめッかけになったなんて、生涯云われるのは寝ざめがわるいからね
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沢屋の落目おちめは覆うべくもなく、病身な主人がここまでつないで来たのはむしろ不思議なくらいです。近所の衆、または町中には、怨みを持った人もありません。
人の家に来てぜにを貰うとは余り智慧ちえのないことだお前はお坊さん育ちで何も知るまいが、人が落目おちめになった所をなまじいに助ければ、助けた人も共に倒れるようになるもので
丁度そんな話のあった頃から兼太郎は沢次の家にもどうやら居辛いづらいようになって来た。初めのうちは旦那の落目おちめに寝返りをしたなどと言われては以前の朋輩ほうばいにも合す顔がない。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ごろには、それとなくかぜのたよりに、故郷こきやう音信いんしんいて自殺じさつしたあによめのおはるなりゆきも、みな心得違こゝろえちがひからおこつたこといてつてたので、自分じぶん落目おちめなら自棄やけにもらうが
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
悪くすると家の落目おちめを招くにきまっている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
くまア恩を忘れず尋ねておくんなさいました、今までなさけを掛けた者はあっても、此方こっち落目おちめになれば尋ねる者は有りませんが貴方あんたも知ってる通り、段々世の中が変って来て
続いてヘンデルとの間に大きなみぞを作ったのは、ハンブルクのオペラの中心人物なるカイゼルであった。カイゼルの落目おちめと嫉妬は、ハンブルクのオペラまでも滅茶滅茶なものにしてしまった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)