にわ)” の例文
また、道士どうしたちの住む墻院しょういん、仙館は、峰谷々にわたり、松柏しょうはくをつづる黄や白い花はましらや鶴の遊ぶにわといってもよいであろうか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あらゆるわれわれのにわの花が、土に根ざして咲き栄えるように、一国の文学にも正しく数千年の成長はあったが、文字というものから文学を引き離して見ることのできぬ者には
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
近ごろ主人の董承とうじょうはすっかり体も本復ほんぷくして、時おり後閣の春まだ浅いにわに逍遥する姿などを見かけるようになったからである。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お稽古は結構ですけれど、このおにわを、何と心得ているんですか。清浄と平和をあらわすためのわたくしたち日本の人々のこころのおにわですよ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立ち入ること禁断の寺院のにわのように、ここの土豪屋敷の広い庭にも、何百年か知れない青苔が一面にながめられる。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関羽は不意にふり向いて、内院のにわをじっと見ていた。風もないのに、そこらの樹木がさやさやと揺れたからである。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わがも同じようにしている館なので、わざと、式台にはかからずに、網代垣あじろがきをめぐって、東のおくにわへはいると
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
型のごとく、錦霜軒を出た二人が、その晩に限って、嵐山から山里のにわへ足を向けて曲がりかけると、山蔭の畑地の中に、一つの人影がチラと見える。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
示す人ですけれど、家庭の者には、おそろしくやかましい人なんです。……ですから、……、こうしてにわへ出てくるにも、ずいぶん苦心して来るんですの
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東山義政ひがしやまよしまさ数奇すきと風雅をこらしたにわがあった。紫陽花あじさい色の夕闇に、灯に濡れたこけの露が光っていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなに、大切なにわならば、なぜもっと、今の人たちが、みなして大事にしないのだい」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もうおよろしいでしょう。すこしにわでも歩いてみるお気持になりませんか」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人招きをしているらしく、蝟集いしゅうする顕官のくるまから、眼もあやなばかり、黄金こがねの太刀や、むらさきの大口袴おおぐちや、ぴかぴかするくつや、ろうやかな麗人がこぼれて薔薇園のにわと亭にあふれているのが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに禁門を犯してなだれこんだ魏兵は、よろいを着、ほこを持って、南殿北廂ほくしょうにわに満ちみちていた。帝は、いそぎ朝臣をあつめて、御眦おんまなじりに血涙をにじませ、悲壮な玉音をふるわせて一同へのたもうた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊帝はまだご若年じゃくねんなので、その悪弊に気づかれていても、いかんともするすべをご存じない。また、張均の苦諫くかんに感動されても、何というお答えもでなかった。ただ眼を宮中のにわへそらしておられた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここは東華門のそと、すぐこの中はもう宮城のおにわでしょう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にわを見たか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)