聚落しゅうらく)” の例文
蛮地では人煙が稀薄であり、聚落しゅうらくの上に煙の立つのはたみかまどの賑わえる表徴である。現代都市の繁栄は空気の汚濁の程度で測られる。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
送って出た女房や子供が連れ立ってこの聚落しゅうらくの出外れまでいて来ていた。いずれにせよ彼らにとってはこれも門出にちがいなかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
三日に一度、往復四里の道を歩いて初繩はつなわ聚落しゅうらくまで食糧の買出しに出かけなければならない。バスに乗って別所まで出かけることもある。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「町中を出離れてから、またこんな広い馬場だの空地だのを通って、その彼方に忽然こつねんと、あんな灯の聚落しゅうらくが現れるのもおもしろいでしょう」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下から出て来るのは竪穴の住居遺跡です。やっと農業がはじまり、竪穴が集まって聚落しゅうらくをなしかけた時代。沢山の土器、鉄片の少々などが出る。
アレッポのパチャリック、ハウラン、及びガザ地方の如き、耕作可能の州では、聚落しゅうらくは多くかつ互に接近している1
防風林にかこまれた農家のひっそりとした聚落しゅうらくや遠く近く点々と茂っている落葉松からまつ林のたたずまいなど見るものすべてがどこかに秋のふぜいをもっていた。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
聚落しゅうらく人をみな戦わせ、人の酒を腐らせ、美しい童女をして別人に嫁ぐを好まざらしめ、夢中に童女と通じ、市中の人をことごとく裸で躍らせ、女をして裸で水を負うて躍らせ、貨財を求め
そうした頃の歌は、数かぎりなくこの日本列島の聚落しゅうらくのうちで、人たちの口にうたわれておったであろうが、社会生活の生長変化にともなって、生活から遊離する歌は勿論つぎつぎに出来ていった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
この草屋の聚落しゅうらくに帰って来て、ひと月に近い日を傍目わきめもふらず費し、わずかに五里何町かの道路をひらいた彼らの力を目の前に見たとき
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
帰路は夕日を背負って走るので武蔵野むさしの特有の雑木林の聚落しゅうらくがその可能な最も美しい色彩で描き出されていた。到る処に穂芒ほすすきが銀燭のごとくともってこの天然の画廊を点綴てんていしていた。
異質触媒作用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その姿が彼らの聚落しゅうらくの草やぶに消えてしまうまで彼は見送った。いずれにせよ、彼女は、とにかく生きていてもらいたかったのだ。それだけであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)