素膚すはだ)” の例文
と言って土間へ出たが、振返ると、若いひとは泣いていました。露がきらめく葉を分けて、明石に透いた素膚すはだを焼くか、と鬼百合がかっあかい。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人は赤皮の飛行帽をかぶって素膚すはだの脚へおれんじ色の紛おしろいを叩くことによって靴下以上の効果を出していた。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
味噌漉し縞縮緬の女物の紙入れを素膚すはだに、これだけは人柄の掴み絞りの三尺、亀島町の薬種問屋近江屋がお年玉に配ったあらの手拭いを首に結んで、ここ合点小路の目明し親分、釘抜藤吉身内の勘次は
みぬらし、わが素膚すはだなるししむらに。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
……参詣さんけいの散った夜更よふけには、人目を避けて、素膚すはだ水垢離みずごりを取るのが時々あるから、と思うとあるいはそれかも知れぬ。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
覺めし素膚すはだにわれ迷ふ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
藍地あゐぢこん立絞たてしぼり浴衣ゆかたたゞ一重ひとへいとばかりのくれなゐせず素膚すはだた。えりをなぞへにふつくりとちゝくぎつて、きぬあをい。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
素膚すはだみな汗にひたれる
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
柳の影を素膚すはだまとうたのでは、よもあるまい。よく似た模様をすらすらと肩もすそへ、腰には、淡紅ときの伊達巻ばかり。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夏の素膚すはだの不断の絽明石ろあかし真白まっしろに透く膚とともに、汗もかかない帯の間に、いつも千円束せんりょうたばが透いて見える、と出入りの按摩あんまが目をいたのが、その新川の帳尻に
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「わりゃ、わなわなと震えるが、素膚すはだに感じるか、いやさ、寒いか。」と、じろじろとみつめて寛々たり。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを、つまは深いほど玉は冷たそうな、膝の上へ掛けたら、と思うが、察するに上へは出せぬ寸断ずたずた継填つぎはぎらしい。火鉢も無ければ、行火あんかもなしに、霜の素膚すはだは堪えられまい。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ドアはその字が読めるようにこっちへ半ば開けてあったんですが、向うには、附添と見えて、薄汚い、そういっちゃ悪いが、それこそ穴だらけのあわせ素膚すはだに着た、風体のよくない若い男が
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)