うね)” の例文
しかしその麦畑の隅の、土手の築いてある側へ来ると、金三は急に良平の方へ笑い顔を振り向けながら、足もとのうねして見せた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蕎麦そばの苗を好んで根本より鎌で刈ったごとく一うねずつ食い尽くす、その他草木の苗も同じく食い尽くす事あり、いかようにしても防ぎがたし
畑の中を、うねから畦へ、土くれから土くれへと、踏みつけ踏みつけ、まぐわのように、かため、らして行く。鉄砲で、生籬いけがき灌木かんぼくの茂みや、あざみくさむらをひっぱたく。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
圃のうねには白く溜って、枯れた草の上も白くなった。風は、益々ますます加わって、家々は、早く戸を閉めてしまう。この時、僧は何処へ去るであろうかと思わしめた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
「春の初めに鍬を入れかけて、うねを真つ直に耕作を済ますのは、丁度秋のかゝりだよ。帰りみちにはそろそろもう収穫とりいれをせんならん程作物さくもつが大きくなつとるだよ。」
其時、畑のうねの中から何か堀り出した大井刑事が驚いたような顔をして飛んで来たが
桑畑のうねの下に沿っている狭い道を、無理やりに進めて来たものだから、当然な帰着として、それ以上は行きようのない山ふところのがけと崖の窮地へ車体を傾けてしまったのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うねに付 二升九合 二升三合三 六合三夕 二割七分
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
鍬打ちててんを楽む人のため天につづける満洲のうね
されども騾馬の鋤くうねの長さの程に、敵の距離
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
彼はもうそう云った時には、うねの土に指をつっこんでいた。良平のびっくりした事はさっきよりはげしいくらいだった。彼は百合の芽も忘れたように、いきなりその手をおさえつけた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
悪魔は、とうとう、数日の中に、畑打ちををはつて、耳の中の種を、そのうねいた。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
良平は仰向あおむけに麦のうねへ倒れた。畦には露がりていたから、顔や着物はその拍子ひょうしにすっかり泥になってしまった。それでも彼は飛び起きるが早いか、いきなり金三へむしゃぶりついた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)