獄門ごくもん)” の例文
「主殺しは磔刑はりつけだ。もう少しでお前は磔刑になるところさ。幸ひ殺されたのが梅吉だから、打首か獄門ごくもんくらゐで濟むんだらうよ」
殺し金子きんす五百兩うばひ取其のちなほ同所どうしよにて三五郎をも殺害せつがひ致し候段重々ぢう/\不屆至極ふとゞきしごくに付町中まちぢう引廻ひきまはしのうへ千住小塚原に於て獄門ごくもんおこなふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「牢内打首」より一段重い死刑は、牢内打首と同じ段取りで打った首だけをさらに梟首きょうしゅするもので、「獄門ごくもん」とよばれるのがそれであった。
せいばい (新字新仮名) / 服部之総(著)
「豆ちゃん。お前。髭さんの大魔術をやるといいわ。一すんだめし五だめし、美人の獄門ごくもんてえのを、ね、いいだろ。おやりよ」
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まさか、お追放ついほうとはゆかないけれど、獄門ごくもんのところを遠島えんとうぐらいにはなるのは御定法ごじょうほうとされている。——つまらない眼にったのはおまえさんさ。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れはかね/″\書物しよもつんで、磔刑はりつけ獄門ごくもん打首うちくび、それらの死刑しけいけつして、刑罰けいばつでないといふことをかんがへてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
曾我そが植松うゑまつ、大工作兵衛、猟師金助、美吉屋五郎兵衛、瀬田の中間ちゆうげん浅佶あさきち、深尾の募集に応じた尊延寺村そんえんじむらの百姓忠右衛門と無宿むしゆく新右衛門とは獄門ごくもん、暴動に加はらぬ与党の内、上田
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すべて革命的の気焔きえんあおぎたる『柳子新論りゅうししんろん』の著者山県大弐が大不敬ふけい罪の名義によりて、死罪申附けられ、その徒藤井右門は獄門ごくもんけられ、竹内正庵(式部)が遠島えんとう申し附けられたるが如き
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
紅絲べにいとのような血を吐いて、一本の枕木の上に、チョコンと、獄門ごくもんの形でのっかって、半白の目でじっとこちらを見つめている。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なせしにより終に死罪の上獄門ごくもんとぞ成にける(此彦兵衞牢内らうないに居てわづら暫時ざんじの中に面體めんてい腫脹上はれあがり忽ち相容變りて元のかたちは少しもなかりしとぞ)
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『ヘイ、その使に来たんですから、何遍でも話します。——実は、和尚鉄が、これを打ち明けて、あなたに頼むのも、何うやら今度は御処刑おしおき獄門ごくもんと極りそうなんで』
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道尊坊は獄門ごくもんになりましたが、平次の情で、お皆にもお濱にも、何のとがもなくて濟みました。
其方儀主人しゆじん庄三郎養子又七つま熊と密通致し其上そのうへとほ油町あぶらちやう伊勢屋三郎兵衞方にて夜盜やたう相働あひはたらき金五百兩ぬすみ取り候段重々ぢゆう/\不屆ふとゞきつき町中まちぢう引廻ひきまはしの上淺草あさくさに於て獄門ごくもん申付くる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
道々すれちがった町人ちょうにんに、都田川みやこだがわのもようをたずねたがそれは、みな伊那丸以下いなまるいかのものが、菊池半助きくちはんすけ斬刀ざんとういのちをたたれて、その首級しゅきゅう河原かわら獄門ごくもんにさらしものとなった
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血の巡りが惡いからお前は氣がつかなかつたらうが、何を隱さう俺達はな、——八合判のいかさまますを使つたといふ罪で、三年前に獄門ごくもんになつた、米屋——越後屋勇助夫婦の忘れ形見だよ
いつぞやこの原の細道ほそみちで、足軽あしがるがになっていくのを竹童ちくどうがチラと見かけた、あの高札こうさつが打ってあるのだ。——といつのにか、その立札たてふだ獄門ごくもんの前へ、三ツの人影ひとかげが近づいている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「惡い女には相違ないが、——俺はどうも若い女を獄門ごくもんや死罪にしたくない」
ホウ、あんなところのだいへ首をのせてどうするんだろう、龍太郎りゅうたろうの首も、忍剣にんけんの首も——アア、獄門ごくもんというのはあれかしら? 親方親方、あれですか、獄門にかけるッていうことは?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)