片褄かたづま)” の例文
前へ立ったのは、みのを着て、竹の子笠をかぶっていました。……端折った片褄かたづま友染ゆうぜんが、わらすそに優しくこぼれる、稲束いなたばの根に嫁菜が咲いたといった形。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
門口から、すぐに、かごに乗る、雪之丞、かごに引き添って、片褄かたづまを、ぐっとはしょって、走りだす、闇太郎
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
筒袖かとも思われるような袂のせまいあわせの上に、手織りじまのような綿入れの袖無し半纒はんてんをきて、片褄かたづま端折はしょって藁草履をはいているが、その草履の音がいやにびしゃびしゃと響くということであった。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
せきへ、うす真綿まわた羽二重はぶたへすべつたやうに、さゝ……とたゞきぬおとがして、ひざむだあしのやうに、友染いうぜんはしが、せきをなぞへに、たらりと片褄かたづまつてちた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
片褄かたづまをはしょって、吹き流しの手拭をくわえるように、暴動市民の群から少しはなれてたたずんだ雪之丞——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
眉が意気で、口許に情がこもって、きりりとしながら、ちょっとお転婆に片褄かたづまの緋の紋縮緬もんちりめんの崩れたなまめかしさは、田舎源氏の——名も通う——桂樹かつらぎという風がある。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、言う呑気のんきな声が聞えて、やがて、人山を割って、一人の職人とも、遊び人ともつかないような風体の、縞物しまもの素袷すあわせ片褄かたづまをぐっと、引き上げて、左手を弥蔵やぞうにした、苦みばしった若者が現れた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
といいあえず、上着の片褄かたづま掻取かいとりあげて小刻こきざみに足はやく、さっと芝生におり立ちぬ。高津は見るより
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寄せたその片褄かたづまが、ずるりと前下りに、前刻さっきのままで、小袖幕のほころびから一重桜が——芝居の花道の路之助のは、ただこれよりも緋が燃えた——誘う風にこぼるる風情。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
激しく跣足はだしになり、片褄かたづまを引上ぐ、紋縮緬もんちりめん長襦袢ながじゅばん艶絶えんぜつなり。おやじの手をぐいとく。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飄然ひょうぜんとして橋を渡り去ったが、やがて中ほどでちょっと振返って、滝太郎を見返って、そのまま片褄かたづまを取って引上げた、白い太脛ふくらはぎが見えると思うと、朝靄あさもやの中に見えなくなった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その下に、前とうしろを、おなじ消防夫に遮られつつ、口紅の色も白きまで顔色をかえながら、かかげた片褄かたづま跣足はだしのまま、宙へ乗って、前へ出ようと身をあせるのは清葉であった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吸子きゆうすを取って、沓脱くつぬぎを、向うむきに片褄かたづま蹴落けおとしながら、美しい眉を開いて
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とにかく、お寺まで、と云って、お京さん、今度は片褄かたづまをきりりと端折はしょった。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいながら土手に胸をつけて、そでを草に、太脛ふくらはぎのあたりまで、友染ゆうぜん敷乱しきみだして、すらりと片足片褄かたづまを泳がせながら、こううち掻込かきこむようにして、鉛筆ですらすらとその三体さんたいの秘密をしるした。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早朝上野の不忍しのばずの池の蓮見はすみ歩行あるいて、草の露のいと繁きに片褄かたづまを取り上げた白脛しらはぎ背後うしろから見て、既に成女の肉附であるのに一驚を喫した書生がある、その時分から今も相変らず、美しい
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おくれ毛を、掛けたばかりで、櫛もきちんとささっていましたが、背負しょい上げの結び目が、まだなまなまと血のように片端さがって、踏みしめてすそかばった上前の片褄かたづまが、ずるずると地をいている。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片褄かたづま取って、そのくれないのはしのこぼれたのに、猶予ためらってはずかしそう。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)