とぼ)” の例文
旧字:
そうしてへやの中にとぼれている丸硝子ガラスの行燈の、薄黄色い光りで向うを見ますと、妾は自分の眼を疑わずにはおられませんでした。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
二本の朱蝋燭しゅろうそくをあかあかととぼさせたり、また、紙銭かみぜにや花をかざり、その間には香煙こうえん縷々るるいて、およそ兄の武大が生前好きだった種々くさぐさな供物は、なにくれとなく
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ろくろくかんなも掛けないような、粗末な薄っぺらな板を集めて、きわめてやにっこく造られたもので、家の内でとぼされている燈火の光が、板の隙間から見えようという
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
秀三郎は、いかけたタバコをポンと地下室の向うに抛って、薄暗の中にポーッと赤い火のとぼるのを見乍ら、卓子に手をついて、ウン、と寝椅子から起き上った時でした。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そうして自分は有り合う提灯に火をとぼして、窓の外へ出まして、そこらをよくあらためて見ますと、石畳のあすこここに、一粒か二粒ずつ紅玉ルビーが落ちています。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)