潯陽江じんようこう)” の例文
上は青空、下は大江、オギャアと泣いたときから、潯陽江じんようこうの水を産湯うぶゆに男となった混江龍こんこうりゅう李俊りしゅん、いやさ今では梁山泊のお一人だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猩々の謡曲には猩々を潯陽江じんようこうの住としたが、わだつみの底とも知れぬ波間よりてふ句で、もと海に棲むとしたと知れる。
趣が支那の詩のようになって俳句にならぬ。忽ち一艘の小舟(また小舟が出た)が前岸の蘆花の間より現れて来た。すると宋江そうこう潯陽江じんようこうを渡る一段を思い出した。
句合の月 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
前の晩私は九江キュウキャンにとまった。ホテルは即ち大元洋行である。その二階に寝ころびながら、康白情氏こうはくじょうしの詩を読んでいると、潯陽江じんようこうはくした支那の船から、蛇皮線だか何かの音がして来る。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
又古人の満沙弥まんしゃみが行った所の風流を真似て歌を詠んで見たりするのである。又ゆうべともなって夕風が桂の樹にあたってさやさやと樹の騒ぐ時には潯陽江じんようこうの夕景色を想ったりするのである。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
潯陽江じんようこうでは商人のためにも名曲をかなでる人があったのでございますから。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
日を経て、呉の擬装船団は、潯陽江じんようこう(九江)の北岸へ漂いついた。うるしのような闇を風浪のすさぶ夜であったが、帆をやすめるいとまもなく
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、浪裏白跳ろうりはくちょうの張順が、その役目を買って出た。——自分の郷里、潯陽江じんようこうのちかい所に、江南随一というはれもの医者が住んでいる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうだ、そんなはなしは、いつか潯陽江じんようこうの白龍びょうでも耳にしたことがある。誰か、速舟はやぶねで朱貴を呼んで来てくれまいか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて船は潯陽江じんようこう(九江)の入江に入り、そこから陸路、西南に鄱陽湖はようこを望みながら騎旅をすすめた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実はいつものように、むこう岸の潯陽江じんようこうへ入って、明後日のいちへ商品を出すつもりでしたのが、あいにくとこの烈しい浪と、この風向きのために、どうしても彼方の岸へ寄せることができません。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)