淡水まみづ)” の例文
爺さんは水洟みづはなと一緒くたに涙をすゝり込むだ。涙も水洟も目高めだかの泳いでゐる淡水まみづのやうに味が無かつた。
其時そのときだい一に堪難たえがたかんじてたのはかはきくるしみこゝわざわひへんじてさひはひとなるとつたのは、普通ふつうならば、漂流人へうりうじんが、だい一に困窮こんきうするのは淡水まみづられぬことで、其爲そのために十ちう八九はたをれてしまうのだが
一年の中ある時の外、使はなかつた神秘の水のあつた事を、別の機会に書きたいと思うてゐる。神聖な淡水まみづが、海から地下を抜けて、信仰行事の日の為に、湧き出るのだと思うてゐたらしいのである。
河童の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
常無きはいよよ清明さやけしさらさらに冬の淡水まみづもながれ來にけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
香気にほひにしてからがうで、石花菜ところてんを食べるのは、海の匂を味はひ、香魚あゆを食べるのは淡水まみづの匂を味はふので、今うして茸を食べるのは、やがてまた山の匂を味はふのである。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
常無きはいよよ清明さやけしさらさらに冬の淡水まみづもながれ来にけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
水量みづかさがぐつと落ちた川尻の塩と淡水まみづとの入り交るあたり、朝寒夜寒のきびしさに、ともすれば季節が後退りしようとするこの四五日、芦の切株に張りつめた薄氷のなかから
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ほの寒きしほ淡水まみづの落合は蛤のもあはれなるべし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みいづる滴りの淡水まみづとは誰か思はむ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)