けがれ)” の例文
また豚是は蹄わかるれども反蒭にれはむことをせざれば汝らにはけがれたる者なり、汝ら是等これらの物の肉をくらうべからず、またその死体しかばねさわるべからず。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
神職 や、このよこしまを、このけがれを、おとりいれにあい成りまするか。その御霊ごりょう御魂みたま、御神体は、いかなる、いずれより、天降あまくだらせます。……
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
篠田は一倍の力を加へつ「梅子さん——此れはいまかつて一点のけがれだも見ざる純潔の心です、今ま始めて貴嬢あなたの手に捧げます」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
また神魂たまは骸と分かりては、なお清くきよかるいわれありとみえて、火の汚穢けがれをいみじくみ、その祭祠まつりをなすにも、けがれのありては、そのまつりを受けざるなり
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
富之助は旅行して來た始めには、詳しい懺悔の手紙を父母や姉に出して、そして姉の今在る危險の状態を警戒し、そして自分は死を以て過去の罪とけがれとを洗ふ積りであつた。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
日本海軍のけがれのない歴史である。見苦しい最期はとげたくない。卑怯なまねはしたくない。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
世は穢れ、人は穢れたれども、我は常に我恩人のひとけがれみざるを信じて疑はざりき。過ぐれば夢より淡き小恩をも忘れずして、貧き孤子みなしごを養へる志は、これを証してあまりあるを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
若き世の歌はここに始めて蘭湯らんたうの浴より出でゝ舊き垢膩くにけがれを洗ひ棄てたのである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
姿あり才ある女の男を持たず世にも習はで、身を終るまでけがれを知らず、山ぎはの荘などに籠り居て、月よりほかには我が面をだに見せず、心清く過ごせるが如きは水仙の花のおもむきなり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
一 下部しもべあまた召使めしつかうともよろずの事自から辛労を忍て勤ること女の作法也。舅姑の為に衣を縫ひ食を調へ、夫に仕て衣を畳みしきものを掃き、子を育てけがれを洗ひ、常に家の内に居てみだりに外へいづべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小字萬徳である。本丸は警固大明神の社のあつた跡なので、血のけがれを避けて、これも利安に預けてある東の丸に産所をしつらはせたのである。九年には城の三の丸で、如水が五十九歳で亡くなつた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
深きけがれの溪四方に震ひ、我は即ち宇宙愛に感ぜりとおもへり
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
気味の悪い黒血のけがれを洗うのだから
人死にて神魂たま亡骸なきがらと二つにわかりたる上にては、なきがら汚穢きたなきものの限りとなり、さては夜見よみの国の物にことわりなれば、その骸に触れたる火にけがれのできるなり。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
水におるもろもろの物の中是うちかくのごとき者を汝らくらうべし即ち凡てひれうろこのある者は皆汝ら之をくらうべし。凡て翅と鱗のあらざる者は汝らこれをくらうべからず是は汝らにはけがれたる者なり。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「おからだのけがれになります。ねえ。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また凡て羽翼つばさありてはうところの者は汝らにはけがれたる者なり汝らこれをくらうべからず。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)