殿御とのご)” の例文
無遠慮ぶえんりょに縁側に腰かけて、微笑したあの顔。丹波の小柄をかわして、ニッとわらった不敵な眼もと……なんという涼しい殿御とのごぶりであろう!
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ヂュリ おゝ、うれしや御坊樣ごばうさまか! 殿御とのご何處どこにぢゃ? どこおぼえてゐる、おゝ、さうぢゃ、そこへわしてゐるのぢゃ?
さあ……枕も二つ、こう鴛鴦おしどりに並べておきますからね。娘や。まあおまえも、いつまでそんなにねているのさ。夜が明けてしまうじゃないか。可愛い殿御とのご
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男ぶりといい人品ひとがらといい、花のかんばせ月の眉、女子おなごにして見まほしき優男やさおとこだから、ゾッと身にうした風の吹廻ふきまわしであんな綺麗な殿御とのご此処こゝへ来たのかと思うと
「あの殿御とのごですよ。初めて今福さんのお嬢さんと大ぴらの交際をなさるようになったのは……」
器量美しく学問音曲おんぎょくのたしなみなくとも縫針ぬいはり暗からず、女の道自然とわきまえておとなしく、殿御とのごを大事にする事請合うけあいのお辰を迷惑とは、両柱ふたはしらの御神以来ない議論、それは表面うわべ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
美しいといいますうちにも、病身なせいもあったのでございましょう、どこやら陰気で、青白く、透き通る様な、ですから、一層水際立った殿御とのごぶりだったのでございますが、それが
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「よく見ておけ、これが見納めだ、貴様の可愛ゆい殿御とのご最期さいごのざまはこれだ」
「まあ! いつまでもそのような、憎らしい口——顔立ちの美しい殿御とのごは、とかく、こころが冷たいといいますが、そなたはそのことわざ、そのままでおいでなさる——それなら、わたしの、病気の程、はっきりいって聴かせましょうぞえ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しんととろりと見とれる殿御とのご
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いやな殿御とのごがござんした
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
なんの因果で、こんな隻眼隻腕の痩せ浪人に……と、はたの眼にはうつるだろうが、お藤の身にとっては、三がい一の殿御とのごです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
火のような、ことばの投げあい、ひとりの、自分のものとする殿御とのごを賭けて、女と女との、たたかいは、男同士のつるぎ沙汰などよりは、もッともッと、命がけです。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乳母 おゝ、御坊ごばうさま、御坊ごばうさま、ひめさまの殿御とのご何處どこにござらッしゃります、ロミオさまは何處どこに?
いやな殿御とのごがござんした
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
それを殿御とのごが聞きつけて
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「じつはねえお嬢さま、あたくしもちょうどあなた様と同じように、いくら思ってもつれなくされる殿御とのごがありますのさ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ヂュリ (樓上より)おまへもういなしますか? あゝ、戀人こひびとよ、殿御とのごよ、わがつまよ、戀人こひびとよ! きっと毎日まいにち消息たよりしてくだされ。これ、一ときも百にちなれば、一ぷんも百にちぢゃ。
かえるの殿御とのご
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)