武者むしゃ)” の例文
裾野にそよぐすすきが、みな閃々せんせんたる白刃はくじんとなり武者むしゃとなって、声をあげたのかとうたがわれるほど、ふいにおこってきた四面の伏敵ふくてき
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、その短かい間の人気は後の紅葉よりも樗牛ちょぎゅうよりも独歩どっぽよりも漱石そうせきよりも、あるいは今の倉田くらたよりも武者むしゃよりも花々しかった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
○今年は五月の節句に武者むしゃ人形を飾ってもいいかしらと心配しているものがある。どうしようと問われてもわたくしには返事ができない。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このいぶかしかった若武者むしゃこそは、これぞ余人ならず、今江戸八百八町において、竹光たけみつなりとも刀差す程のものならばその名を知らぬ者のない
ついて猛然とハンドルを握ったまではあっぱれ武者むしゃぶりたのもしかったがいよいよくらまたがって顧盻こけい勇を示す一段になるとおあつらえどおりに参らない
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少女はなだめられるとよけい武者むしゃぶりついて泣き立てるのでした。さすがのミス・ミンチンもそれにはたまりかね、室外に聞えるほどの声で喚きはじめました。
お袋が死んでしまうと言って、素足のまま帯しろ裸で裏へ飛び出して行ったことや、狂気きちがいのように爺さんに武者むしゃぶりついて泣いたことなどを、女中は手真似をして話した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
武者むしゃぶるいというのでしょう。なんだか、からだがふるえて心臓がドキドキしてきました。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少年たちは、武者むしゃぶるいした。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
で、武田伊那丸たけだいなまるは、いやがうえにも、希望きぼうをもった。武者むしゃぶるいとでもいうような、全霊ぜんれいの血とにくとのおどりたつのがじぶんでもわかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう叫ぶが早いか、今度は彼の方から父親に武者むしゃぶりついて行く。狂気の沙汰さたである。そこで世にもあさましい親と子のとっ組合いが始まるのだ。だが、これは何も今夜に限ったことではない。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
運わるく、そのなかに、伊那丸の容貌かおかたちを見おぼえていた者があった。かれらは、おもわぬ大獲物おおえものに、武者むしゃぶるいをきんじえない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)