樹林じゅりん)” の例文
食用蝸牛の養殖ようしょく一寸ちょっと面倒な事業だそうである。その養殖場には日蔭ひかげをつくるための樹林じゅりん湿気しっけを呼ぶこけとが必要である。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
十町ほどむこうに、鉛色なまりいろ泥湿地でいしっちが、水面とおなじくらいの高さでひろがり、その涯は、ひょろりと伸びあがった生気せいきのない樹林じゅりんで区切られている。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
どこまで高いかとあおむいてみると、四方の樹林じゅりんをつきぬいて、奇怪きかいえだをはっている。白いきりがきたときは、その木の半分以上はんぶんいじょうは、まさに雲表うんぴょうに立っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全山ぜんざん城地じょうちと見なし、十七ちょう外郭そとぐるわとし、龍眼りゅうがんの地に本丸ほんまるをきずき、虎口ここうに八門、懸崖けんがい雁木坂がんぎざか、五ぎょうはしら樹林じゅりんにてつつみ、城望じょうぼうのやぐらは黒渋くろしぶにてりかくし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山はまたもとの静寂しじまにかえって、坩堝るつぼをでたようなが、樹林じゅりんの上の秋の自然しぜんをかがやきらした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)