くろ)” の例文
そのというものは日増ひましにうみれて、おきほうくろうございました。毎年まいねんふゆになると、このみなとからふね航路こうろがとだえます。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
武家の大逆もさることながら、ここしばしは、日月じつげつくろうなり、至尊しそんたりとも、あめしたにお身を隠す所すらない乱れを地上にみるでしょう。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから日一日ひいちにちおなじことをして働いて、黄昏たそがれかかると日がうすづき、柳の葉が力なくれて水がくろうなるとしお退く、船が沈んで、板が斜めになるのを渡って家に帰るので。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無器用な作りを見せた笛にも、やはり田舎らしい、くろずんだよい音いろがあつた。
笛と太鼓 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
そんなことでもう空大分くろなった時分、二人ともまた前の山の方い戻って来まして、あんまりくたぶれましたよって、山の中途へんい腰おろして休みながら、しばらくぼんやりしてます時でした。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
暫く経ってわたくしが気が附きまして眼をひらいて見ますと、四辺あたりくろうございますから、出ようと存じても出る事も立つことも出来ませんで、わたくしは死んで埋められたのではないかと手をなでて見ると
「どうしてそんな所へまで参れるものでございますか、くろうて」
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「そしたら、みさきへつくのがくろうなる」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
その提燈ちょうちんは、かみがすすけているので、くろうございました。どんなひとがそこにすわっているのだろうと、正吉しょうきちおもいながら、だんだんと、その露天ろてんほうちかづいてきました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)