春水しゅんすい)” の例文
この相談を受けた時、二葉亭の頭のすみッコにマダ三馬さんば春水しゅんすいの血が残ってるんじゃないかと、内心成功を危ぶまずにはいられなかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
馬琴ばきん春水しゅんすいの物や、『春雨物語』、『佳人の奇遇』のような小説類は沢山あったが、硯友社作家の新刊物は一冊もなかった。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
とか、てめえはてえそうきいたふうなことをぬかすのう。などゝ云うと、三馬さんば春水しゅんすいの人情本ではおつだが、明治の聖代に母親おふくろの口から出ては物凄い。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
類聚るいじゅう』に出でし句と覚ゆれど、予のはじめこれを見て艶麗えんれいの感に堪へざりしは、春水しゅんすいの『梅暦うめごよみ』の中にありしなり。
俳句の初歩 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「それから手前どもでも、春水しゅんすいを出そうかと存じております。先生はおきらいでございますが、やはり俗物にはあの辺が向きますようでございますな。」
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
読本は京伝きょうでん馬琴ばきんの諸作、人情本は春水しゅんすい金水きんすいの諸作の類で、書本は今う講釈だねである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
うま穿うがっているという点からいえば、この蕪村の句よりも前の蓼太の句の方がはるかに上かも知れぬけれども、春水しゅんすいというものの趣——春水満四沢というような趣——を味って
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすいの替えぶたがついて……」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
春水しゅんすいや四条五条の橋の下
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
これは昨年の春春水しゅんすいこいといふ事を題にして十句作つた事があるのを思ひ出してまたやつてみたのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
即ちビェリンスキーの文学、ゴンチャローフの文学、ドストエフスキーの文学、ツルゲーネフの文学であって、京伝きょうでんの文学、春水しゅんすいの文学、三馬さんばの文学ではなかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
京伝きょうでん一九いっく春水しゅんすい種彦たねひこを始めとして、魯文ろぶん黙阿弥もくあみに至るまで、少くとも日本文化の過去の誇りを残した人々は、皆おのれと同じようなこの日本の家の寒さを知っていたのだ。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
春水しゅんすいをせせらぐやうにしつらへし
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それで学校から帰つて毎日何をして居るかといふと友と雑談するか春水しゅんすいの人情本でも読んで居た。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
私は真実の口話の速記を文章としても面白いと思って『牡丹燈籠』を愛読していた。『書生気質』や『妹と背鏡』は明治かぶれのした下手な春水しゅんすいぐらいにしか思わなかった。
明和年代に南畝なんぽが出で、天明年代に京伝きょうでん、文化文政に三馬さんば春水しゅんすい、天保に寺門静軒てらかどせいけん、幕末には魯文ろぶん、維新後には服部撫松はっとりぶしょう三木愛花みきあいかが現れ、明治廿年頃から紅葉山人こうようさんじんが出た。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
名にし負ふ木曾の春水しゅんすいき止めて
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
徳川幕府の有司は京伝きょうでんを罰し、種彦たねひこ春水しゅんすいの罪を糾弾したが、西行と芭蕉の書のあまねく世に行われている事には更に注意するところがなかった。酷吏の眼光はサーチライトの如く鋭くなかったのだ。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ある日左千夫こい三尾を携へ来りこれをたらいに入れてわが病牀のかたわらに置く。いふ、君は病にこもりて世の春を知らず、故に今鯉を水に放ちて春水しゅんすい四沢に満つる様を見せしむるなりと。いと興ある言ひざまや。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
春水しゅんすいや子をほう真似まねしては
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすいが手錠はめられ海老蔵えびぞうは、お江戸かまひの「むかし」なら、わしも定めし島流し、すずりの海の波風に、命の筆の水馴竿みなれざお、折れてたよりも荒磯の、道理引つ込む無理の世は、今もむかしの夢のあと
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
春水しゅんすいをたゝけばいたくくぼむなり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすいや四条五条の橋の下
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
春水しゅんすいに落るが如くほとりせり
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすいに逆さになりて手を洗ふ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすいに両手ひろげて愉快なり
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすい矗々ちくちくとして菖蒲しょうぶの芽
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
春水しゅんすいや一つ浮きたる水馬みずすまし
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)