打衝ぶつか)” の例文
像の不思議な後光に打衝ぶつかって、初老期の禁ぜられた性的願望が、如何なる症状に転化して行ったか——その行程プロセスが明瞭になる。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
おまえがさわくるいたいとおもったなら、たかやまうえへでも打衝ぶつかるがいい、それでなければ、よるになってから、だれもいないうみなかなみ相手あいてたたかうがいい。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
之等のものは労働組合を作つて資本家に打衝ぶつかるより道はない。又社会の悪組織から来る貧民窟は、社会を改造することによつて始めて救ふことが出来ると考へた。
それに打衝ぶつかろうという意気がほのみえるだけに、……秘密の、深い深い底をのぞき知ろうとする、彼はいま完全に好奇心の俘虜。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこへいくと、おまえたちや、うみなどは、きているのだから、おれ打衝ぶつかってゆくとさけびもするし、また、たたかいもする。おれは、じっとしていることはきらいだ。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それも絶えず欠け、しきりなく打衝ぶつかりあい……氷河としたら激流にひとしい不思議さで、人よ、渡るなかれと示しているのだ。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
はじめからんでいるも同然どうぜんまち建物たてものや、人間にんげんなどのつくったうちや、堤防ていぼうやいっさいのものは、打衝ぶつかっていっても、ほんとうにんでいるのだからいがない。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
その日、昼食が終って間もなく、法水を訪ねた検事と熊城が書室のドアを開いた時、突然その出会いがしらに、法水の凄じい眼光に打衝ぶつかった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
伸子の陳述が終ると同時に、三人の視線が期せずして、打衝ぶつかった。しかもそれには、名状の出来ぬ困惑の色が現われていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
けれども、十二宮ゾーディアック全部となると、そういう形体的な符号の記されてないものが四つあって、そこで僕は、思いがけない障壁に打衝ぶつかってしまったのだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
なにをする! と、突き飛ばされたセルカークはころころと転げ……オフシェンコに打衝ぶつかったらしく、あっと彼の声がする。と、突然の火光、囂然ごうぜんたる銃声。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それが扇形おうぎがたに拡がったり、泡が打衝ぶつかって、白い皮膚のようにスウッと滑らかになると、縞に曲線に、乱れ入り組んで、っとするような交錯が起り、また砕け散って
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
やがて、夜が明けたとき、視線が打衝ぶつかった。私は、あの傀偉かいいな手の一撃でつぶされただろうか。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これは、きっと肉体的な衝撃ショックよりも精神的なものだろうと、思うとともに期待のほうも強まってくる。彼はたしかに、なにか想像もできぬような異常な出来事に打衝ぶつかったにちがいない。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)