打揃うちそろ)” の例文
もむ折柄をりからに近邊の人々も驚きて何故傳吉殿は召捕めしとられしと種々評議ひやうぎおよびやがてて女房おせんをつれ組頭百姓代共打揃うちそろひ高田の役所へ罷り出御慈悲じひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あるひは両国花火の屋形船やかたぶね紺絞こんしぼりの浴衣ゆかたも涼し江戸三座えどさんざ大達者おおだてもの打揃うちそろひてさかずきかわせるさまなぞあまりに見飽きたる心地す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こちらはかねての手筈どおり、かく打揃うちそろうたが、宗時殿には、婚儀の席を外して、物々しい人数までき連れ、何でかような所へ伏せておらるるのか。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乗物のりもの支度したくもなかつたので、私達わたくしたちはぞろ/\打揃うちそろうてそとた。そしてえんタクでもとおりかゝつたらばとおもつて、さびしいNまちとおりを、Tホテルのほうへとあるいた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
照りはせぬけれどもおだやかな花ぐもりの好い暖い日であった。三先輩は打揃うちそろって茅屋ぼうおくうてくれた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
討入前の重大な会議のこととて、その日は安兵衛も、勘平も、小平太も打揃うちそろうて午過ぎから出かけた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
夫人ふじんとも/″\せつすゝめるので、元來ぐわんらい無遠慮勝ぶゑんりよがちわたくしは、らば御意ぎよゐまゝにと、旅亭やどや手荷物てにもつ當家たうけ馬丁べつとうりに使つかはし、此處こゝから三人みたり打揃うちそろつて出發しゆつぱつすることになつた。
それに奥坐舗では想像おもいやりのない者共が打揃うちそろッて、はなすやら、笑うやら……肝癪かんしゃく紛れにお勢は色鉛筆を執ッて、まだ真新しなすういんとんの文典の表紙をごしごしこすり初めた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
十人が打揃うちそろってまた会津屋敷まで出かけることになって、その前に伊東に会って打合せをすると、伊東が言うことには、まあ今日は会津屋敷へ行くのは止せ、相手が一筋縄ではいかない奴だから
この三拍子が遺憾なく打揃うちそろうという事は人生容易にいがたい偶然の機をたねばならぬ。偶然の好機は紀文奈良茂きぶんならもの富を以てしてもあながちに買い得るものとは限られぬ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)