慾張よくばり)” の例文
慾張よくばり抜いて大急ぎで歩いたからのどかわいてしようがあるまい、早速さっそく茶を飲もうと思うたが、まだ湯がいておらぬという。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
慾張よくばりの婆が明日の命を知らず爪に火をともして銭を数へるやうに、わけもなく筆が取りたいのだ。読残した書物が読みたくてならないのだ。何の為だ。
冬日の窓 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
自分じぶん主人しゆじん慾張よくばりで、ろくなものを自分じぶんにも自分じぶんどもにもべさせません、よく王樣わうさま御威嚴ごゐげんをもつてしかつていたゞきたい。と、それからつぎには……
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
慾張よくばりと名のある不人望な人の畑や林は、此時こそ思い切り切りまくる。昔は兎に角、此の頃では世の中せちからくなって、物日にもかせぐことが流行する。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と源次郎は慾張よくばり助平すけべいとが合併して乗気のりきに成り、両人がひそ/\語り合っているを、忠義無類の孝助という草履取が、御門ごもんの男部屋に紙帳しちょうを吊って寝て見たが
慾張よくばりの婆が明日の命を知らず爪に火をともして銭を数えるように、わけもなく筆が取りたいのだ。読残した書物が読みたくてならないのだ。何の為だ。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
拭掃除ふきそうじを致しますから、手足はひゞが絶えません、朝働いて仕まってからお座敷へ出るような事ですから、世間の評が高うございます、此の母親おふくろはおさきばゞあと申しまして慾張よくばりの骨頂でございます
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ざまあみやがれ、慾張よくばりめが。おいらがおこつてかたくなると、こんなもんだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)