意久地いくぢ)” の例文
平常つね美登利みどりならば信如しんによ難義なんぎていゆびさして、あれ/\意久地いくぢなしとわらふてわらふてわらいて、ひたいまゝのにくまれぐち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おんなじと思ふ男があれば、間違ひです——馬鹿か意久地いくぢなしのことでせう。自分以外のものの爲めに謀叛むほんされたのです。女は謀叛人です。」
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
『あゝ、阿父さんの所為せゐでも無い、阿母さんの所為せゐでも無い、わしの所為せゐでも無い。みんな彼奴あいつのわざだ。みつぐ意久地いくぢがあるなら彼奴あいつさきるがいゝ。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
同時に彼は、子爵といふかんむりのある勝見家の門内もんないまツて、華族といふ名に依ツて存在し、其の自由を束縛そくばくされてゐることを甚だ窮窟にも思ひ、また意久地いくぢなく無意味に思ふやうになツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「さうですか。ぢや手紙も書きますまい。」男は此ことばの次に「もう一度考へ直して下さい」と云はうと思つたが、この場合それが如何にも意久地いくぢがないやうにも思はれたので、口をつぐんでしまつた。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
意久地いくぢなさ、きたなさを感じて、下らない樣な、馬鹿々々しい樣な、憎らしい樣な厭氣いやきを抱かざるを得ない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
いまいましい奴めと腹立たしげにいひて、取止めんと手を延ばすに、ひざへ乗せて置きし小包み意久地いくぢもなく落ちて、風呂敷は泥に、わが着る物の袂までを汚しぬ。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此のときぐらゐ藝術家の意久地いくぢの無いことはあるまい、いくらギリ/\むだとツて、また幾ら努力したと謂ツて、何のことはない、やぶけたゴムまりべたに叩付たゝきつけるやうなもので何の張合はりあひもない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『切れ無いかい。貢さん。意久地いくぢが無いね。約束したぢや無いか。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
たてかけしかさのころころところががりいづるを、いま/\しいやつめと腹立はらたたしげにいひて、取止とりとめんとばすに、ひざせてきし小包こづゝ意久地いくぢもなくちて、風呂敷ふろしきどろ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぼく鼻緒はなをつて仕舞しまつてようかとおもつてる、本當ほんとうよわつてるのだ、と信如しんによ意久地いくぢなきことへば、左樣そうだらうおまへ鼻緒はなをたちッこはい、いやれの下駄げたはいゆきねへ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御自分ごじぶんくちからてゆけとはおつしやりませぬけれどわたし此樣このやう意久地いくぢなしで太郎たらう可愛かわゆさにかれ、うでも御詞おことば異背いはいせず唯々はい/\小言こごといてりますれば、はり意氣地いきぢもないうたらのやつ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)