悚然ぞっと)” の例文
「何より不気味だね、衣類きものの濡れるのは。……私、聞いても悚然ぞっとする。……済まなかった。お染さん。」
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重太郎も足下あしもとを覗いて流石さすが悚然ぞっとした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「でも、私はもう、僂麻質と聞いても悚然ぞっとするよ。何よりこわいんだ。なぜッてまた小六さんのように。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第一、乳母ばあやにだっておもてを見られるようよ。それにね、なぜか、誰よりも目の見えない娘が一番恐いわ。母さん、と云って、あの、見えない目で見られると、悚然ぞっとしてよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美女 潮風、いその香、海松みる海藻かじめの、咽喉のどを刺す硫黄いおう臭気においと思いのほか、ほんに、すずしい、かおり、(やわらかに袖を動かす)……ですが、時々、悚然ぞっとする、なまぐさい香のしますのは?……
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
判然きっぱり言う。その威儀が正しくって、月に背けた顔があおく、なぜか目の色が光るようで、うすものしまもきりりと堅く引緊ひきしまって、くっきり黒くなったのに、悚然ぞっとすると、身震みぶるいがして酔がめた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思わずも悚然ぞっとせしが、これ、しかしながら、この頃のにはあらじかし。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふらふらと並んで見えるように聞き取られて、何となく悚然ぞっとした。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だって、今でさえ、悚然ぞっとなすったじゃありませんかね。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おびえて立ったね、悚然ぞっとした。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)