恵那えな)” の例文
益田ましだの三郡共有地、および美濃国は恵那えな郡、付知つけち、川上、加子母かしもの三か村が山地の方のことをも引き合いに出したものであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大正五年十一月六日 恵那えな中津川に小鳥狩を見る。四時庵にて。島村久、富岡俊次郎、田中小太郎、清堂、零余子れいよし、はじめ、泊雲、楽堂がくどう同行。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
河口はとにかく、犬山からこの笠松までの悠容ゆうようたる大景を下流にして、初めて中流の日本ライン、上流の寝覚ねざめ恵那えなの諸峡が生きるのである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「雪降り積もった恵那えなの山を十重二十重とえはたえにおっ取り巻き猪狩り致さば面白かろう。いざ猪狩りの用意致せ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いや、そういうよりも、十兵衛光秀の内に燃えている青年の慾望に、恵那えなの明智城は、余りに小さく、余りに文化の光や、時勢のうごきに、遠すぎたのである。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍ヶ岳以北は、見えなかったが、木曾駒ヶ岳は、雪の荒縞を着ながらも、その膚の碧は、透き通るように柔らかだ、恵那えな山もその脈の南に当って、雄大にそびえている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
東京から西に見える甲相の連山中にあるものを始めとし、木曾にも恵那えなにも阿寺あてらという小部落はあり、また今度気を付けていたら三河の北部にも二三箇所同名の地があった。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もういちど大きく乗りだしたいとあせっている……恵那えなのウラニウムの試掘の件で、秋川にまとまった金をだしてもらいたいのだが、神月は、秋川を恐れているので、じぶんでは、言いだせない
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私はその二階へ上がって来た森さんとも一緒に、しばらく窓のそばに立って、久しぶりで自分を迎えてくれるような恵那えな山にもながめ入った。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼はいちはやく、手下を捨て、峰づたいに、恵那えな山脈のふところへ、逃げ去ってしまったらしいのである。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのすばらしい白と金とのむこうに恵那えな、駒ヶ岳、御岳おんたけの諸峰が競って天をしているというのだ。見えざる山岳の気韻きいん彼方かなたにある。何ともったぶどうねずみの曇り。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
美濃恵那えな郡原田村大字漆原うるしばら字阿寺
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
恵那えなの前山真っ暗じゃ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
古い歴史のある御坂越みさかごえをも、ここから恵那えな山脈の方に望むことができる。大宝たいほうの昔に初めて開かれた木曾路とは、実はその御坂を越えたものであるという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その年、美濃の斎藤氏の一族の乱で、恵那えなの明智城をおとされ、それまで、身を寄せていた叔父の子、明智光春と一緒に、山越えして越前へ落ちのびて行ったのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで二泊、名古屋に引き返して一泊、それから恵那えなへ行った。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ジロウタロウ 美濃恵那えな
御坂峠みさかとうげ風越峠かざこしとうげなぞの恵那えな山脈一帯の地勢を隔てた伊那の谷の方には、飯田いいだにも、大川原にも、山吹やまぶきにも、座光寺にも平田同門の熱心な先輩を数えることができる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
朝霧に、夕霧に、一日まし、秋は蕭殺しょうさつと、恵那えなの高原から、人間の通う峠へも下りてくる。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同 恵那えな明知あけち町字片平
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
毎年旧暦の三月に、恵那えな山脈の雪も溶けはじめるころになると、にわかに人の往来も多い。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恵那えなの山づたいに甲州へ落ちのび、例の小六が苦心して製作させた鉄砲を献物けんもつとして、武田家へ取り入り、甲州の乱波者らっぱものの組(しのび・攪乱隊こうらんたいの称)へはいったということであった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我里は木曾の谷の、名に負ふ神坂みさかの村の、さかしき里にはあれど、見霽みはらしのよろしき里、美濃の山近江おうみの山、はろばろに見えくる里、恵那えなの山近くそびえて、胆吹山いぶきやま髣髴ほのかにも見ゆ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
北は恵那えな、西は飛騨ひだや、美濃みのの山々に囲まれていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの恵那えな山の見える山地のほうから、次郎はかなり土くさいげて出て来た。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
七年の月日の間に数えるほどしか離れられてなかった今の住居すまいから離れ、あの恵那えな山の見えるような静かな田舎いなかに身を置いて、深いため息でもいて来たいと思う事もその一つであった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)