心待こゝろまち)” の例文
代助はこゝろのうちに、あるひは三千代が又一人ひとりで返事をきにる事もあるだらうと、じつ心待こゝろまちに待つてゐたのだが、其甲斐はなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その千円が手につたら、腹癒はらいせに一つ思ひ切つて洒落しやれた茶会でも開いてやらうと、心待こゝろまちにしてゐると、其処そこへ届いたのは藤田氏からの一封で
今までは毎年まいねん長い夏休みのをはころへば学校の教場けうぢやうなんとなく恋しく授業の開始する日が心待こゝろまちに待たれるやうであつた。のうひ/\しい心持こゝろもちはもうまつたく消えてしまつた。つまらない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
代助は此前このまへ平岡の訪問を受けてから、心待こゝろまちに、あとから三千代のるのをつてゐた。けれども、平岡ひらをか言葉ことばついに事実としてあらはれてなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
翌日よくじつは平岡の返事を心待こゝろまちらした。其あくる日もあてにして終日しうじつうちにゐた。三日みつか四日よつかつた。が、ひら岡からは何の便たよりもなかつた。其中そのうち例月れいげつの通り、青山あをやまかねもらひに行くべきた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)