まっ)” の例文
ただの宿屋には泊られないから、江戸に這入はいったらば堀留ほりどめ鈴木すずきと云う船宿に清水が先へいっまって居るから其処そこへ来いと云う約束がしてある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それよりは今霎時、きばみがき爪を鍛へ、まづ彼の聴水めを噛み殺し、その上時節のいたるをまって、彼の金眸を打ち取るべし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
出されて馬道の氷屋へ住込しが七月四日の朝母より「親指は今日午後五時の汽車で横浜へ行き明後日あさってまで確かに帰らぬからきッとおいでまって居る」
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「太吉や、気分もいいし、お天気も好さそうだから町へ行って来るぞ。昼過ひるすぎにはじきに帰ってくるからまっていれよ。」
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いきたる母にもの云う如く袖を絞って泣き伏して居ますのがやゝ暫くの間で、其のうちう日が暮れかゝりましたから霊岸を出て、深川の木場を廻りふけるをまっ永代橋えいたいばしへ掛りました。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
河を渡ろうとおもって寒風の吹く処に立て一時間も船の来るのをまって居る、ヤッと船がついて、やれ嬉しやこの船に乗ろうとう時に
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は、手を上げてうのも物憂ものうかった。自然に逃げて行くのをまっていると、烏はじっとして動かなかった。
抜髪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ順風をいのって船の出られるのをまって居るその間の怖さと云うものは、何の事はない、躄者いざり病犬やまいぬに囲まれたようなものでした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)