張合はりあ)” の例文
「まったくだ。それだけに俺たちにしろ、うんと張合はりあいがあるッてもんだ。叔父貴、いま孫新へ言ったことを、もう一ぺん話してやりねえ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日から新らしい一学期がっきだ。けれども学校へ行っても何だか張合はりあいがなかった。一年生はまだはいらないし三年生はない。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのうちおりてこの良人おっとなりとたずねさせていただきうございます。そうすれば修行しゅぎょうをするにもんなに張合はりあいがあることでございましょう……。
「ふん。なにをいっても、張合はりあいのねえ野郎やろうだ。めしはらぱいわせてあるはずだに。もっとしっかり返事へんじをしねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
また此の、品川で、陣羽織菊綴きくとじで、風折烏帽子かざおりえぼしむらさき懸緒かけお張合はりあつた次第を聞いて、——例の天下の博士はかせめが、(遊ばされたり、老生ろうせいも一度の御扮装を拝見。)
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昔の因縁いんねんを考えると、わしとて、譲らんでもないが、しかしあのように敗けてばかりいるのでは張合はりあいがない。——で、当時とうじ、醤の奴は、どこにいるのか。重慶じゅうけいか、成都せいとか、それとも昆明こんめい
年を取りすぎた自分のような者にとってこそ、是は心残りの、またあいすまぬことでもあるが、本日会合の諸君の大多数のためには、是くらい張合はりあいのある現実はちょっと類が無いであろう。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平次と一時張合はりあつて、近頃はすつかり折れて了つた本所の御用聞、石原の利助の娘、お品——平次の女房お靜とは仲好しの美しいお品——は翌る日、支配人祿兵衞ろくべゑの手で、石井家へ入り込みました。
張合はりあいのない気力は体の疲れを一層濃厚にした。
と、切ッ先を向けようとした二官の狂わしさも、多少張合はりあいを失って、ただ殺そうとして殺し得ない愛憎の白刃しらはが、泣くように光をふるわすのみであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今や元気と常識とを取り戻した彼は、勇躍ゆうやくして、その仕事ビジネスについた。また新たに、生きている張合はりあいといったものが感じはじめられた。彼は、ふしぎに自分の体が、軽くなったように思った。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
げた! と聞いておどろいた熊蔵くまぞうや、張合はりあいぬけのした若侍わかざむらいたちが、半信半疑はんしんはんぎの目をさまよわせて、どこへげたのかと明け方にちかい八方の天地をながめまわすと——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張合はりあいのないくらいかんたんにうなずいて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)