幕僚ばくりょう)” の例文
振向くと、司令官の谷干城たにたてき少将が、参謀の児玉こだま源太郎少佐、樺山資紀かばやますけのり中佐など幕僚ばくりょう五、六名といっしょに、廊下に立っていた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新鋭戦艦マサチュセッツは大統領とその幕僚ばくりょう、それに金博士を乗せると、沖合さして二十三ノットの速度でのりだしていった。
これを聞いて、校尉こうい韓延年かんえんねん以下漢軍の幕僚ばくりょうたちの頭に、あるいは助かるかもしれぬぞという希望のようなものがかすかにいた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
当直士官が幕僚ばくりょう室に、「カブを上げ」たかったからに過ぎない。私は憂欝な気持で昼食を終え、寝台に入り、昼寝をした。そして夢を見た。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ここに細川方の幕僚ばくりょう丹波たんばを領している細川下野守教春しもつけのかみのりはるも、その数にれず、急いで国元へ引返して行きました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それはこの時彼等の間へ、軍司令官のN将軍が、何人かの幕僚ばくりょうを従えながら、厳然と歩いて来たからだった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「マダ十分解らんが、勝利は確実だ。五隻か六隻は沈めたろう。電報は来ているが、海軍省が伏せてるから号外を出せないんだ、」とさも大本営か海軍省の幕僚ばくりょうでもあるような得意な顔をして
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
馬上の佐久間玄蕃允げんばのじょうは、途々みちみち、部署の将士へこう云いながら、幕僚ばくりょう数十騎、兵二千をつれて、まだ燃えているさかりに、山上へ登って行った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「戦況を、五分五分に保ち得ているところを考えると、最後の勝利は、わがアメリカに在ることが明瞭めいりょうじゃ」提督は静かに幕僚ばくりょうかえりみて云った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その時突然次の部屋から、軍司令官を先頭に、軍司令部の幕僚ばくりょうや、旅団長などがはいって来た。将軍は副官や軍参謀と、ちょうど何かの打ち合せのため、旅団長を尋ねて来ていたのだった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
騎兵を主力とする匈奴に向かって、一隊の騎馬兵をも連れずに歩兵ばかり(馬にまたがる者は、陵とその幕僚ばくりょう数人にすぎなかった、)で奥地深く侵入することからして、無謀のきわみというほかはない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
赤軍の陣営では、軍団長ぐんだんちょうイワノウィッチが本営から帰ってくると、司令部の広間へ、急遽きゅうきょ幕僚ばくりょう参集さんしゅうを命じた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
少なくも上席の幕僚ばくりょうなどとは。——けれど争うがよしとかたく信じるほどな理由があればこそ、勝家と争った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
捕虜の言が偽りでなければ、これで胡軍は追撃を打切るはずである。たかが一兵卒の言った言葉ゆえ、それほど信頼できるとは思わなかったが、それでも幕僚ばくりょう一同いささかホッとしたことは争えなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
途中まで来ると、長浜から幕僚ばくりょうの一名が、きのうからの戦況報告に来るのと出会った。長浜でも秀吉がこう早く帰って来るとは思っていなかったとみえる。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのはたの下に、見晴らしのいい桟敷さじきがあって、醤主席は、幕僚ばくりょうを後にしたがえ、口をへの字に結んでいた。
と、秀吉は幕僚ばくりょう、六、七騎をつれて山を降り、はるか高松城の西——その城を右手めてにのぞみながら、足守川あしもりがわの門前とよぶ地点まで遠乗りした。一汗ぬぐって
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あ、今、何かがあったらしい。甲板上を走る水兵の眼の中にも、何かあったらしい事が、よく見える。艦橋には、艦長以下幕僚ばくりょうたちが全部集って、しきりに双眼鏡そうがんきょうのぞいている。
沈没男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竹中半兵衛に会うと、まず何より先にそれを問うのが、官兵衛始め幕僚ばくりょうたちの通例になっていた。事実、半兵衛の容体は、戦場へ来てから決してくない容子なのである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この物々しい地下街の中心である警備司令室では、真中に青い羅紗らしゃのかかった大きい卓子テーブルが置かれ、広げられた亜細亜アジア大地図を囲んで、司令官を始め幕僚ばくりょうの、緊張しきった顔が集っていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前後にある幕僚ばくりょうたちの影は、何事やらん? ——と疑うように、彼にならって駒を止めたが、前隊はなお知らないで先へ進んでいた。——当然、中軍との間が約半町も隔てられた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この司令艇には、大宇宙遠征隊の司令が幕僚ばくりょうをひきつれてのっている。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼方かなたの森の中からである。程なくそこの篠村八幡の境内から光秀以下、騎馬の幕僚ばくりょうたちが、西陽にしびを斜めに、燦々さんさんとして騎歩しずかに、各部隊をえっしながら順次こなたへ近づいて来るのが見られた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「えっ」といっているとき、幕僚ばくりょうが部屋へとびこんで来た。
参謀長は、すっかり、冷静さをとり戻して幕僚ばくりょうを集めた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)